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カースト

 輪廻概念が古代インドで芽生えた時に、バラモン階級がある入れ知恵をした。魂の階級、生まれ変わりにも階級があり、「天界」、「人間」、「畜生」、「餓鬼」、「地獄」の5種類とした。これをバラモン教の「五道」という教えである。支配階級のバラモンは、この死後に関わる「五道」の思想を、現世の社会階級にまであてはめた。天界の神々の下にバラモン(司祭階級、人間)、クシャトリア(武士階級、畜生)、バイシャ(庶民階級、餓鬼)、スードラ(奴隷階級、地獄)を定めたのである。バラモンはヴェーダの戒律に沿って生き、クシャトリヤは武術の自己訓練、正しい行為に沿って生き、ヴァイシャは金銭的欲望に従って生き、スードラは感覚的欲望に従って生きるとされた。当時のバラモン教の教えでは、輪廻してもよほど徳を積まない限り、同じカースト階級に生まれる、というものだった。奴隷階級のスードラ、女性、さらにはその下のアウトカーストの人々は、一回しか生まれない一生族[エーカジャ]とされた。虫や家畜と同じようなもの、として扱われた。一生族ではないカースト、バラモン、クシャトリア、ヴァイシャなどの階級は、バラモン教を熱心に信仰し、徳を積むことで、次の人生では上位のカーストに生まれ変われるとされた。カースト最高位のバラモン階級の男性のみがヴェーダの祭祀を学び、マントラを唱え、再生のない永遠まで到達するとされた。それが解脱とされた。つまりは、アートマンがブラフマンと合一することである[梵我一如]。バラモン教の解脱は梵天との合一であり、天界の永遠のことだった。バラモン教は、カースト制度を利用して支配体制を確立した。これは、マインドコントロールによる社会支配である。


しかし、ブッダはカーストを否定し「誰でも修行すれば解脱できる」とした。支配階級のバラモン教と真っ向から対立、弾圧を受けることとなった。