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五蘊とカインとアベル

概念や語句は対象(モノ)について、依っているものだが、概念や語句単独では存在しない。概念知が概念、語句、数を認識するときには知覚を通して認識する。概念知は例題(モノ、所取)を必要とする。が、例題としての認識内形象は個別相なので概念知たり得ない。

 

自己認識とは、対象のモノを認識するのではなく、対象のモノの認識(コピーされた)ものを認識している、ということ。我々は青色を認識しているのではなく青色への認識を認識している。では、認識や知覚を外れたところに、青色は存在するか?というわけだが、青色は空相であり、青色という概念そのものは知られない、ということ。

 

青色という概念そのものは、存在しない。青色の代理の知覚認識と結びついて始めて青色と確定される。識(分別)は確定作用であり、想薀というレンガを認識しやすい形に固めている。固められたモノがあばら家だったら、それを城に変えたいという意志作用が行だが…が、あばら家という語句概念はあばら家的な印象を醸し出している想薀との結びつき(付託)無しには成立せず、むろん語句概念のみでも成立しない。同じく、城という語句概念は城的な印象を醸し出している想薀との結びつき(付託)無しには成立せず、むろん語句概念のみでも成立しない。

 

相手がコックだったら、材料が想薀であり、料理の概要、ジャンル、名称が識であるとする。料理する行為そのものが行となる…と、ブッダは説くだろう。そして、最後に、材料は、実は精巧なコピーで(6境)、実物は不在だと言うだろう。料理の材料が精巧な偽物ならば、料理じたいも精巧な偽物だ。ならば、料理する行為も空虚な行為だろう。

 

じつに、有るとか無いとかも認識なので、触れない状態の原材料は有るとも、無いとも言えず、量子力学のように有る状態と無い状態が重なっているとも、アポーハ不可なので有無両方でもない状態、というのも認識なので違う。

物質(色)の認識が不在(空)なのである。色不異空、空不異色。色即是空、空即是色。感受されてからの知覚内容(想薀)はすでに不在(空)の代理、穴埋め、補完なので、想薀のレンガをどのように組み合わせようと、代理は代理。精巧な偽物、コピーと言えよう。

 

目の前のモノにはヴェールがかかっており…知(認識)という母により、知覚や名称のある既知のモノ(子)が生まれている。父のヴェールが剥がれることを悟りと呼ぶのか?ヴェールが剥がれたところで、何も認識できないだろう…認識できないのだから。認識したらすでに母に依ってしまうわけで…あらゆる認識、情報(形態や名称)の不在は父とそれほど違わない…

目の前のモノ(父)にはヴェールがかかり、知(認識)という母により、知覚や名称のある既知のモノ(子)が生まれている。

認識内形象は、純粋に母(知覚認識)の産物であり、母と分けては言えない。形象は単独では父の元へ昇天してしまう(キリストのように)。母により認識内形象として誕生するが、母も対象なくしては眠って作用しないものとして知られない。子を照らすのが母ならば照らした子を見て始めて母の存在が知られる。母は動的である。動的な作用としての母(知覚認識作用)。

 

個別想の認識内形象と、語句概念、この2人の相容れない兄弟。この2人の兄弟が協力しないと世界は作れない。語句概念は、認識内形象を殺して死体を切り取り保存するところから始まる。これは、セム(名称)のニムロドへのバラバラ殺人事件に似るが、さらに重要な喩えがある。アベルとカインである。

 

カインとは本来ヘブライ語で「鍛冶屋、鋳造者」の意味であるが、鋳造者の意味が正しいだろう。概念知は人類初の殺人者に喩えられた。ユダヤ人のセンスにはエグ味がある。アベルには「息」「はかないもの」「無価値」などの意味があるが、「はかないもの」がベストだと思う。はかないもの=無常なもの。形象(色)は感受され(受)、想薀(認識内形象)となる。これらは「はかないもの、無常なもの」でありアベルである。カイン(識、概念知、確定知、鋳造者、分別)である。想薀(知覚印象)は分別、確定知により殺害(行)され鋳造者に鋳型に押し込まれ、保存され、再び取り出され想起される。カインはまさしく農耕者として倉庫(識)を保有している。認識内印象であるアベルはまさしく流離うもの「遊牧民」としての性格を有している。カインはこの行(殺害)により、エデンの東にあるノド(נוֹד、「流離い」の意)の地に追放されたという。かくして、概念知、確定知自体も流離い、忘却される運命となった。

 

‎この時、神は、もはやカインが耕作を行っても作物は収穫出来なくなる事を伝えた。これは、保存記憶された認識はもう変化することもないこと、変化や無常はアベルの領域(色、受、想)であることを意味する。去ったものはもう去らない。また、追放された土地の者たちに殺されることを恐れたカインに対し、ヤハウェは彼を殺す者には七倍の復讐があることを伝え、カインに誰にも殺されないために刻印をしたという。有名なカインの刻印である。カインの刻印は文字の誕生を意味している。概念知最大の発明である。他の心的諸力により殺害(忘却)されないように…文字が与えられたのだ。